Photographer
Eito Mars(エイトマーズ)
フォトスタジオTOL代表。
母の遺影を撮影したことをきっかけに、まるで声が聞こえてくるような「生きる写真力」に魅了されカメラマンを志す。
これまでファッションブランドの撮影や、西武百貨店などで数多くの写真展を開催。鮮明で躍動感のある写真が特徴的。
現在は東京にて「1000人の輝きを写すプロジェクト」を始動するなど活躍の場を広げている。
最高のヒトコマを切り取る「瞬間の魔術師」。
私がカメラマンになったきっかけは、20代半ば頃、がんを患った母の遺影を撮影したことでした。
余命1年を宣告され「遺影を撮影して欲しいの」と、暗い顔ひとつせず、きれいに着飾ってピンク色の口紅をひいて、笑顔でカメラの前に立つ母。
まだ趣味でカメラをやっていた未熟な頃でした。
何百とシャッターを切って撮れた最後の一枚。
まるで母の笑い声がそのまま聞こえてくるかのような。
そんな「生きた一枚」が撮れたのでした。
その後母は他界しましたが、私が写真を撮る上でモットーにしている「まるで声が聞こえてくるかのような生きる写真」の第一号となり、今も私の心の真ん中に母のその表情があります。
美しい表情をして、ピタッと時間を止めたような写真もきれいだとは思います。
でも私の写真のコンセプトは「その時、その瞬間にしか撮れない、生きる写真・躍動感のある写真」を撮ること。
その瞬間をドラマティックにキリトリ、生きた声や表情をその一枚にいかに詰め込むか、なのです。
今回の撮影はモデルの方を元気にしてあげたいというよりも、ただ「彼女らのありのままの美しさを引き出し、カメラの前でさらけ出してくれた笑顔や生きる力、無邪気な瞬間を撮りたい」。
ただそれだけです。
「坊主の女性を撮る」ということ。
髪が抜ける。それは大変ショックなことだと聞きます。
ただでさえ不安な中で、髪がない自分を見て、
「夫にどう思われるかな・・・」
「女性として見てもらえるかな」
「どんな反応をされるかな」
と暗い気持ちに浸食されるかもしれません。
もしかしたら、坊主姿を見てギョッとされるかもしれないし、引かれてしまうかもしれない・・・。
「髪は女の命」。
確かにそうかもしれない。
ですが本当にそうでしょうか。
髪は今まで「私の一部」を作ってくれたかもしれませんが、「私自身」の中にある「美しさ・芯・人を愛する気持ち」はいつだって過去も今も変わらずに詰まっている。
つまり、「私」というものの中身は何も変わらないのです。今回モデルとなる女性の方々が持つ、唯一無二の「美と愛」を表現したいのです。
外見が変わってしまうかもしれないことに、たくさんの不安を抱えている方がいらっしゃいます。
ですが、それって「坊主の女性を見慣れてないからだけじゃないの?」とも思います。
そして、どんな外見でも本質は変わらない。みんな美しいのです。
「ありのままのあなたが綺麗」だと言って欲しい。
自信を持っていたい。
ありのままの笑顔をしていたいし、ありのままの私で愛したいし、愛されてたい。
そんな清らかな想いを持つ女性を、艶やかに美しく。
それぞれの輝きを魅せたいと考えています。